骨粗しょう症は、年齢とともに骨強度が低下し、骨折をしやすくする骨の病気です。
背骨の骨折は姿勢不良との関係性が非常に高く、骨折の再発率も高くなります。
1984年にアメリカの病院に所属している日本人の研究者によって、背骨の圧迫骨折の6年以内再発率と運動との関係を調査した研究が行われました。
さて、皆さんは下のどのグループが、最も背骨の骨折の再発率が低くなる運動群だったか、わかりますでしょうか?
1. 腹筋運動のみ 2. 背筋運動のみ 3. 腹筋と背筋の両方 4. 何も運動せず
今までの常識に従って考えれば、3の「 腹筋と背筋の両方」をしたグループが骨折の再発率が低く、4の「何も運動せず」のグループが骨折の再発率が高いと考えるか方が多いかと多います。
しかし、実験の結果は衝撃的なものでした。
なんと、「腹筋運動のみ」をしたグループが最も骨折の再発率が高く、「背筋運動のみ」をしたグループが最も骨折の再発率が低いという結果になりました。
運動と背筋の両方を運動したグループでさえ、半数以上の人が骨折を再発させたのです。
腹筋運動は、誤ったやり方をすると、背骨の特に「椎間板」に大きなストレスをかけます。その繰り返しが、金属疲労と同じような現象を生み出し、骨折を助長してしまう可能性が高いのです。
このような事実は、30年以上前に科学的に証明されています。しかし、
いまだにフィットネスの現場でも、「上体起こしの腹筋指導」をシニアの方に指導している実例が多数見受けられます。
現場に、このような「科学の知識」が反映されておらず、旧来型のトレーニング理論やトレーニングマシンが蔓延しているのです。
これは、例えば30年近く前まで「運動中は水を飲むな」という誤った運動指導がまかり通っていた現象と、ほぼ同じようだと考えています。
トライリングスでは、例えば、シニアの方の姿勢を安全で効果的に改善できる「チェストスプレッド」というマシンを導入しています。
胸は縮めるのではなく、伸ばした方が姿勢改善を促すことができます。
うつ伏せで背筋がきつい方でも、これであれば「骨粗鬆症の悪化」を防ぐ運動ができるのです。
私たちは、運動によって姿勢が劇的に変化する方々を多く見てきました。
「腹筋運動が健康に良い」と誤った認識の中でトレーニングしている世の中を、少しずつ変えていければと思っています。
トライリングス共同代表
東京大学大学院身体運動科学研究室所属
田沢 優